議会質問
 増える生活保護受給世帯にどう対応 【平成18年6月定例会】
 最近、「格差の拡大」とか「下流社会」といった言葉が話題となっておりますが、平成17年の厚生労働省の「国民生活基礎調査」によりますと、年収300万円未満の世帯が全体の3割を占めるとのことです。
 また、厚生労働省の調べでは、一人暮らしの高齢者は303万人、ニートは85万人、フリーターは417万人となっており、パート、フリーターなどの非正規雇用労働者は、この15年で900万人から1600万人に増加しています。金融中央委員会の調べでは、貯蓄ゼロの世帯が全世帯の23%となっており、国民年金保険料滞納者は約445万人となっております。
 このように、社会の環境は極めて厳しい状況にあり、生活に困窮される方も増えています。名古屋市における生活保護の動向は、平成18年4月現在、保護受給世帯が21,915世帯となっており、前年同月の21,098世帯と比較し、3.9%の伸びを示しているということです。

 こうした中で、さきごろ厚生労働省は、社会保障費削減策として生活保護制度を大幅に見直す方針を固め、一人親の家庭の給付に上乗せされている母子加算の支給用件を厳しくするほか、持ち家に住むお年寄りには自宅を担保にした生活資金貸付制度を利用させて、生活保護の対象から外す方針と聞いています。
 一方で、生活保護の基準額は名古屋に住む一人暮らしのお年寄りで「月約8万1千円」で、国民年金の満額6万6千円より高く「引き下げるべきとの声」もあります。月6万6千円で生活ができるとは思えませんが、いずれにしても大変厳しい状況にあることは間違いありません。
 足りないケースワーカー、生活保護業務を嫌う職員  
 現在、生活にお困りの方については、区役所の福祉事務所の保護係が、相談窓口として相談にのっており、必要に応じて生活保護が適用されます。そして、必要な保護を行うために、その世帯の自立に向けて、ケースワーカーによる指導・援助が行われるわけです。
 保護を受給している方の相談に応じ必要な指導を行うことで、自立支援のために重要な役割を担っているのがケースワーカーですが、本市においては、被保護世帯数が21,915世帯ですから、国の定める標準数の274名に比較し、本市の現在員数203名であり、その差が−71名となっています。必要なケースワーカー数が充足されていない状況があります。

 市はこれまで、保護係に嘱託職員、派遣職員などの業務補助職員を配置することで、ケースワーカーの負担軽減にも努めてきたとのことですが、昨今の保護受給世帯の急増もあり、依然、必要とされる職員数とは乖離がみられます。
 また、生活保護は、地方自治体内で一、二を争う不人気業務と聞いています。配属を希望する職員がいないため、何も知らない新入職員が配属され、血を吐くような思いをすることもたびたびと聞いています。理由はいくつも挙げられます。制度の矛盾や体制の不備から、無力感に襲われる職員もいると聞いています。
 被保護世帯数の急増に追いつけず、嘱託職員の導入を検討
 そこで、健康福祉局長に、以下3点についてお尋ねいたします。1点目は、ケースワーカーが未充足となっている現状に対し、これまでどのように対応し、今後どう対応されるのかについてお考えをお聞きしたいと思います。

≪市の回答≫
 ケースワーカーの配置は、社会福祉法第16条により、被保護世帯数80に対し、ケースワーカー1が標準数となっています。しかし、人口の急速な高齢化等に伴い、被保護世帯数の増加が続いており、これに対応して、平成12年度から今年度までの7年間で62名のケースワーカーを増員するなど、体制の充実に努めておりますが、被保護世帯数の急激な増加に追いつかないのが現状です。
 厳しい財政状況及び定員管理計画の中で、ケースワーカーの大幅な増員は困難であることから、業務の電算化のほか、医療介護事務、面接相談業務等への嘱託職員の導入や就労支援業務、電算入力業務等への業務委託による内部事務の省力化を進め、ケースワーカーの負担の軽減を図っています。今後も、ケースワーカーの充足に努めるとともに、さらに嘱託職員の導入等を検討してまいります。
 専門的知識が要求されるケースワーカー、向上への取り組みは?
 面接員、ケースワーカーは複雑な相談に対応する必要があり、一定の専門的知識が要求されると思います。本市の場合、福祉専門職が配置されているわけではありませんので、こうした専門知識を習得することが大切であり、研修による資質の向上が求められます。2点目は、生活保護業務に従事する職員の専門性の向上について、どのような取り組みがなされているのかについてお聞きしたいと思います。

≪市の回答≫
 生活にお困りの方の相談にあたる面接相談員につきましては、多様な相談に対応する中で、福祉に関する専門的知識が要求される場合も多くございます。そのため、福祉業務の経験が豊かである他、社会福祉主事資格を有する職員を多く配置し、専門的な相談に対応できるよう配慮しているところでございます。
 また、ケースワーカー等生活保護業務に従事する職員につきましては、各業務についての専門研修を実施し、資質の向上に努めているところでございます。
 生活保護業務については職員の専門性が強く求められており、本市では、面接員やケースワーカーに対して、生活保護制度に関する研修の他、年金制度や介護保険など、他法他施策に関する研修、多重債務者に関する法律専門研修、医学的知識に関する研修など幅広い研修を実施し、専門知識の向上に努めているところであり、今後もその充実を図ってまいります。 
 相談内容が複雑多様化、生活保護のみでの対応に限界
 生活相談を進めていく中では、生活保護までにいたらず、その他の様々な制度を用いて解決を図る必要があるケースがあると思います。例えば、サラ金等による多重債務をかかえ、その解消に向けての支援が必要な方、ドメスティック・バイオレンスの被害により保護が必要な方、精神障害などにより生活面でのケアが必要な方、児童虐待への対応、ホームレスその他いろいろな事例が想定されます。
 相談内容が複雑多様化している中、生活保護のみでの対応には限界があると思いますが、関係機関との連携をどのように図っているかについてお聞きしたいと思います。

≪市の回答≫
 本市におきましては、福祉事務所での相談件数に対する生活保護の適用率は、おおむね25%となっています。生活保護が適用された方につきましては、その方が抱える様々な問題を解決するため、福祉事務所の担当者が適切な関係機関に案内し、必要な指導援助を行っています。
 ご指摘のように、生活保護の相談窓口には、病気のこと、サラ金のこと、失業のこと、離婚、ドメスティック・バイオレンス、虐待など、様々な生活上の障害に関する相談が持ち込まれます。
 生活保護が適用されなかった方につきましても、相談の中で生活保護制度以外の解決の方法等を丁寧に教示しており、例えば、多重債務の整理については法律扶助協会を案内し、ドメスティック・バイオレンスについては、愛知県女性相談センターとの連携を図り、精神疾患や難病などについては、保健所や専門病院を案内するというように、それぞれの専門の相談窓口や関係機関を紹介するほか、必要に応じて、福祉事務所から連絡を行うなど、その方の生活安定に向け支援を行なっているところです。
 相談窓口がバラバラな福祉事務所 一本化して関係機関との連携を図れ
 他機関との連携についてですが、生活保護は、他のサービスや施策が優先され、それでも救えないときに適用する制度であります。本来的には福祉事務所の総合相談を担うはずであり、他機関との連携が前提の作業のはずです。
 特に、今は保健所が区長の下で同じ組織の中であり、連携がとりやすいはずです。具体的な連携強化の方策や工夫はないのでしょうか。例えば、定期的な会議やホットラインで、関係部署に連絡を取り合うようなことはできないでしょうか。

 福祉事務所においては、高齢者に関する相談、介護や障害者、DV及び児童虐待の相談など福祉に関する様々な相談があり、それぞれの窓口で相談を受けていると聞いております。
 相談者によっては、複合的な問題を抱えた方も多いと思いますが、それらの方がそれぞれの相談窓口を巡って相談するというのは、骨の折れることであります。一つの窓口を通じて関係機関への有機的な連携が図られ、福祉に関するサービスがもれなく実施されれば、福祉事務所は、市民にとって、本当に安心で頼りになる存在になるとおもいます。
 生活保護については、専門的な知識を持った面接員などを配置して相談にのっているという答弁がありましたが、福祉事務所として総合的な福祉サービスを受けられるような相談体制をとれないものでしょうか。

 ≪市の回答≫
 生活保護の業務は、地域のセーフティネットとしての役割を担っていることから、地域の関係機関・団体等と連携することが大切であると考えています。従って、社会保険事務所、ハローワークなど他機関とも協力関係を構築しているところです。
 さらに、保健所とは保健師や精神保健福祉相談員と同行して、被保護世帯への訪問を行うなど、連携に努めているところです。
 生活保護の業務は、地域の関係機関・団体等と良好な関係を築き、連携を密にすることが求められています。今後も、定期的な連絡会議を開催したり、問題が生じたとき迅速に対応ができるよう地域の関係機関・団体等との連携を強化してまいります。

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