がん患者の緩和ケア支援体制について 【平成17年11月定例会】
 がんは1981年以来、日本人の死亡原因の第1位を占め、2004年には32万人を突破して、ここ数年、3人に1人と言われてきたのが2人に1人も遠くないと言われています。その要因としては、平均寿命の延長などに伴う高齢者人口の増大をはじめとして、環境や生活習慣の変化などが考えられています。
 名古屋市内のがんによる死亡者数は平成15年で約5000人と、診断・治療技術の進歩にもかかわらず、依然として、この数年横ばいの傾向となっています。結腸がん、前立腺がん、乳がんなどの欧米型のがんは増加傾向にあります。また、治療率の向上が難しい「難治性のがん」というものが依然として存在しています。
 「在宅緩和ケア」の重要性が高まってきています
 このように、発見が遅れたり、治療が困難で治療効果も期待できない末期のがん患者に対して、がんの痛みを取り除く治療を行うだけでなく、精神的な苦痛を軽減し患者や家族の意思を尊重しながら、可能な限り最後の日まで有意義な時間を過ごせるよう支援する「緩和ケア」が課題となっています。
 末期がん患者への緩和ケアとしては、ホスピスなどの緩和ケア病棟の整備が進められていますが、「住み慣れた家で家族に囲まれて、最期を迎えたい」、「たとえ寝たきりでも、在宅医療で側にいてくれるだけで心の安らぎを覚える」という患者や家族の声に応え、「在宅緩和ケア」の重要性が高まってきています。
 末期がん患者に介護保険適用、一気に増える「在宅ケア」
 「在宅緩和ケア」を推進していくためには、往診をする医師や看護師の不足、核家族化などの課題があり、国レベルでの広域的な対応が必要な事業とは考えますが、地域の連携システムが重要です。こうした制度は、他都市では以前からネットワーキングをはかり、支援体制を整えている地域はいくつもあります。
 今後、名古屋市としてどのような対応が可能なのでしょうか。そこでまず、市内の緩和ケア病棟を有する病院の状況及び「在宅緩和ケア」を実施している医療機関の状況について健康福祉局長に伺います。
 次に、私は、痛みや症状を和らげながら、その人らしい生活を在宅で送るためには、医療や看護、介護などの地域連携により患者や家族を支えるケア体制が重要と考えます。
 2006年の医療制度改革に在宅医療の促進が検討されており、同じく2006年より、65歳以下の末期と診断されたがん患者に介護保険が適用となる見込みです。医療機関は積極的に在宅へと誘導することとなり、患者・家族も介護保険に後押しされて、在宅を受け入れるケースが一気に増えることが予想されます。
 現在のように在宅緩和ケア医が不足のままでは、在宅へ移行しても不安と混乱を増すこととなり、不幸なケースが多発することとなります。そうしたことから行政、学識者、医療・福祉関係者、市民、NPOなどとの地域一体となった「がん患者在宅ケア支援会議」の立ち上げが早急に必要となってくると思いますが、健康副支局長のご所見をお伺いします。
 緩和ケア支援体制のネットワーク化急げ
[回答]
・現 状
 名古屋市内において緩和ケア病棟を有する病院は、平成16年度の愛知県医療実態調査によりますと、 3病院50床ございます。また、末期がん患者への総合的な在宅医療を実施している医療機関は、5病院、19診療所ございます。
・基本的な考え方
 がん患者の方が、住み慣れた自宅において、緩和ケアを受けながら自分らしい生活を送り続けるためには、それを支援する医療・介護・福祉のネットワークが必要であると考えております。
・現 状
 本市における在宅緩和ケアにつきましては、地域における組織的な取組みは少ないのが現状です。一方、国におきましては、都道府県に在宅緩和ケアの推進を働きかけるとともに、医療制度改革案において、後期高齢者の在宅ケアのための医師、看護師、介護支援専門員、訪問介護員等の連携による医療・介護サービスの提供等に配慮した診療報酬体系の検討が進められています。
 さらに介護保険制度の改正に閲しましては、平成18年度より40歳以上の「がん末期患者」を介護サービスの対象とすることが検討されるなど、在宅緩和ケアを支える環境整備が進められています。
・今後の対応
 現在見直しが進められている愛知県地域保健医療計画におきましては、がん対策の一環として緩和ケアの提供体制の整備や関係機関の連携が課題に掲げられております。そこで、緩和ケア支援体制のネットワーク化につきましては、在宅緩和ケアの推進などを目的に愛知県が設置した「訪問看護推進協議会」を通じて、今後、医療関係団体と連携を図りながら進めてまいりたいと考えております。
 支援システムの名古屋市独自の取り組みを要望
[再質問]
 市内の緩和ケア病棟を有する病院は3カ所とのことです。私の母も51歳で胃がんで亡くなりました。治療の手段が閉ざされた「末期がん患者」の方の生活の質を重視した「緩和ケア」は、今後ますます重要となってくると思います。
 平成15年に作成されました名古屋市の「市立病院整備基本計画」によりますと、東部医療センター守山市民病院では、「緩和ケア」を実施する計画となっております。この緩和ケア病棟の早期整備につきましても強く要望します。
 さきほどの局長答弁で、緩和ケア支援体制のネットワーク化について、県の枠組みに乗っかり、訪問看護推進という視点からの発想では、医療・看護・介護の地域連携促進は困難です。
 市民の立場や意見も必要であると思います。名古屋市は220万市民を有する政令都市であります。市民ニーズにそった緩和ケア支援システムの独自の取り組みを強く要望いたします。 大都市においては、人口や産業の集中にともない、市民のニーズも高まり、また質的にも高度で多種多様な行政サービスが必要になってきます。
 こうした一般の市では解決することが難しい、大都市特有の問題を解決するために、地方自治法上やその他の法令において、一般の市とは異なる行政制度及び財政制度上の特例を設けて、市民の生活に関わりの深い事務に関する権限や財源を都道府県から大都市に移譲し、大都市行政の合理的、能率的な執行と市民福祉の向上を図ろうとするものが、「政令指定都市制度」なのです。

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